About Life, or Chess.

チェスについて、綴っていきたいと思います。

オープニング総論

 

 ここでは, チェスにおけるオープニングのセオリーについて説明していきたいと思います.

 このページを総論として, 詳細なラインの説明は個々のページが出来次第リンクを貼って行くつもりです(まだリンクがついてないものはbe under constructionなのだと察してください……).

 

 チェスとは

 これを説明しないと始まりませんね.

 たとえば, 私がいきなり「今日はトーテ・オーマについて話しましょう」と言って登場したとして, トーテ・オーマが何だかわからない人にとってはその説明があるまでは頭の中ははてなでいっぱいのことでしょう. なのに一切の説明もなくディスカッションに入ると言われては困ったことになります.

 ちなみにトーテ・オーマとはチューリンゲンの郷土料理でソーセージを使ったディッシュです. 意味は『死んだおばあちゃん』. どこにもぶっ飛んだセンスの方っているんですね.

 それは置いといて......

 簡単にチェスについてを, オープニングのセオリーを説明する上で必要だと思うところだけこの項目で書いていきます. ピース(駒)の動きとかはやりません. 気が向いたらやるかもしれません.

 

 チェス(Chess)とは, 要は囲碁や将棋などを含むマインドスポーツの一種です. ベンジャミン・フランクリンは,

 Life is a kind of Chess, with struggle, competition, good and ill events.

と言ったそうです. 私のブログタイトルは実はここから来ているのでした.

 日本語では『西洋将棋』とも呼ばれていますね. 既存のものと比較することは新規なものの説明にとっても楽なので, この単語に便乗して説明することにしましょう.

 将棋との違いは大きく三つ,

   盤とボードの違い

   駒とピースの違い

   ルールの違い

でしょうか. マイナーなものを合わせればいっぱいありますが, それは適宜補っていきます.

 についてですが, 将棋で用いる盤は縦横9マスの計81マスですね. ここから81歳のことを『盤壽』と呼んだりするらしいじゃないですか. 縦のことを『段』, 横のことを『筋』といい, 右上(1一)から左下(9九)まで, 縦と横の座標を合わせてその位置を指します.

 対して, チェスで用いる盤のことをChess Boardからボードと呼びますが, これは8×8の64マスです. さらに違いとして,白黒など2色に塗り分けられたチェッカー模様をしているというのがあります.

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Figure.1 Chess Board

 

 こうですね.

 必ず左下(a1)が黒になるように置きます. 縦を『ランク』, 横を『ファイル』と呼び, a1~h8までこれらを組み合わせて位置を示します.

 についてですが, これは簡単に行きます. 

 将棋で用いられるのは駒ですが, チェスではこれに相当するのをピースと呼びます. ピースは白黒たがいに6種類(キング, クイーン, ルーク, ナイト, ビショップ, ポーン)で, ポーンが8つ, キングとクイーンが1つずつ, あとは2つずつの計16個のピースを巡って駆使して闘うわけです. 初期配置は下の様になります.

 

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Figure.2 Start Position

 最後, についてです.

 取った敵の駒が使える将棋と違い, チェスでは取ったピースが使えないというのは大きいでしょうね. 相手のピースは自分と色の異なるピースですので, 必然的に使えない. この点, やはり升田幸三先生の慧眼は正しく, 将棋の方が人道的なゲームなのかもしれません.

 次いで, 『囲い』という概念が無い代わりにキングを戦闘地帯から遠ざける『キャスリング』という特殊な動きがあります.

 

 あとはぼちぼちチェスというゲームが将棋のマイナーチェンジでなく, 確固とした別のゲーム性を確立している由縁たる違いをいくつか書いてこの項を締めます.

 Figure.2を見れば瞭然のことですが, このゲーム, 初形が点対称ではなく線対称なんですね. また, 囲碁や将棋と違って,オセロと同じ升目を用いるチェスは手数という観点から言えば最初に挙げたふたつのゲームよりも規模の小さいものだと言えます. 面白いデータがhttps://blog.ebemunk.com/a-visual-look-at-2-million-chess-games/というサイトにあるのですが, 最頻値は30~40手の所にあるので, 将棋の半分くらいの体感でしょうか. そうそう, 忘れてはならないことに, 将棋は先手が指し1手, 後手が指し2手目……と進んで行きますが, チェスは白と黒とが互いに1ムーブさせて初めて1手と数えます. するとそんなに大差ない気もしてきましたね......

 こうした違いが最も顕著に出るのチェスの特異性のひとつに, 先手と後手の狙いが異なるというものがあると思います. どういうことかと言いますと, 先ほどのサイトのデータをまたしても借用しますが, 勝率の話をすると白(先手)勝利が85万回で38.8%, 黒(後手)勝利が65万回で29.8%, そしてドロー(引き分け)は69万回で31.4%と後手勝利よりも高いんですね. これはレーティングにして上は2861から下は215までと雑多なデータセットなのでこうなったのでしょうが, マスター同士など実力伯仲でやればこの限りではありません. つまり, チェスというのは後手番が非常に勝ちにくいゲームということなのです. 白を引けば勝ちに行くのが第一の目的となりますが, 黒を引いたなら『ドローに持ち込もう, あわよくば勝って盛大に煽り散らしてやろう』と, こういうことになります. ドローの条件はいくつかありますがここでは深入りしません.

 

 オープニングとは

 オープニング(Opening)とは,簡単に言えば,序盤の10手~20手くらいの決められた流れのことです. ゲームがコンパクトで, また取ったピースが使えないチェスにおいては, 早い段階で有利な駒組みを目指したいのが人情というもの……! というわけで先人たちの深い思考の下に洗練されてきた動かし方というのをオープニングと, そう呼ぶわけです.

 ここで再掲するFigure.2を見てみましょう.

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Reiterating Figure.2

  d1のクイーンは初手で動かすことができませんね. これはルークやビショップ, キングについても同じことです. こうした大きな能力を秘めたピースが動かしやすいように, 

 ★ ピースの展開

というのは序盤の目的のひとつになってきます。

 他には、

 ★ キングの安全確保……キャスリングを視野に, 戦いは自分のキングから離れ, かつ少しでも相手のキングに近いところで起こしたいじゃないですか.

 ★ センター・コントロール……中央に堅固な砦を築かれたら破って敵陣に侵入するのは至難の業です.

 ★ ピース同士の連結……あるピースが取られても取り返せる体勢を作っておくのは大事なことです. 自分が損をするなら相手にも相応の代価を払わせねばなりません.

 こういったことを目的に序盤はピースを展開していくわけです.

 次項から少し具体的なパターンを見ていきましょう.

 

 オープニングのパターン① オープン・ゲーム

 

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Figure.3 King's Pawn Game

 センター支配をしたい, そして他のピースの通り道を開けたいと思った私(白小夜)が初手に1. e4と突くのは非常に自然な発想だと思いませんか? 実際, チェスの初手で最も多いのはこの手ですね. 伝説のチェス・プレイヤーであるボビー・フィッシャーも「初手はe4が最善」と言ってますからね!

 e2にあったポーンはキングの前にあるので特にキングズ・ポーンと呼ばれます. これを初手に突くから, 1. e4で始まるゲームは『キングズ・ポーン・ゲーム』の名があります. 初手d4ならクイーンズ・ポーン・ゲームになるということです. 簡単ですね. これでもうチェスの50%ほどがわかりましたよ!

 黒番の受け方としてはどうでしょう. ここで考えたいのは, 黒としてはドロー上等だということです. ということは, 初期配置が線対称なのだから, 線対称を崩さないでいれば引き分けに持ち込めるのでは……というなんとも狡猾なことを黒小夜が考えてもおかしくないですよね. うーん, なんとも狡猾.

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Figure.4 Open Game

 1. e4 e5と動かしたこの局面をもって, 『オープン・ゲーム』と呼びます.

 オープン・ゲームで始まるラインとしては,

  ・イタリアンゲーム

   ・エヴァンス・ギャンビット

   ・ジオッコ・ピアノ

   ・ジオッコ・ピアニッシモ

   ・ツー・ナイツ・ディフェンス

   ・ハンガリアン・ディフェンス

   ・パリ・ディフェンス

  ・それ以外

   ・ルイ・ロペス

   ・センター・ゲーム

   ・キングズ・ギャンビット

   ・フィリドール・ディフェンス

   ・スコッチ・ゲーム

 などがありますね. 個別の解説記事は書いたらリンクを貼って行きます.

 

 オープニングのパターン② セミ・オープン・ゲーム

  別に対称形を作るというのはルールでもなんでもないので, 黒は1手目をe5から変えても良い訳です. 1. e4とキングズ・ポーンを突き出す手に対して黒番がe5以外で答えるラインは『セミ・オープン・ゲーム』と呼ばれます. やはり線対称が崩れてしまうので, 早々に玄人好みの展開になりやすい, というところでしょうか. 1. e4に対して多い順にc5, e5, e6, c6, d6……と, こんな感じですね. そうです, 純粋なオープン・ゲーム(1. e4 e5)よりも1. e4 c5という始まりの方が多いんですね. 

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Figure.5 Sicilian Defense (1. e4 c5)

 これはセミ・オープンの代表, シシリアン・ディフェンスです. こんな風にしょっぱなから対称形を崩して黒は技巧的な試合運びを目指します.

 セミ・オープン・ゲームとしては,

 ・シシリアン・ディフェンス

 ・フレンチ・ディフェンス

 ・カロ・カン・ディフェンス

 ・センター・カウンター

 などがあります.

 

 オープニングのパターン③ クローズド・ゲーム

 中央支配と他のピースの展開を目論む白小夜が先ほどは1. e4とキングズ・ポーンを突き出しましたが, 横8マスの中央というとeファイルの他にdファイルもありますよね. これを元気よく初手で突いていくのが, クイーンズ・ポーン・ゲームです. 初手としては1. e4の次に多い手になります.

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Figure.6 Queen's Pawn Game

 クイーンというのは攻守において最強のピースなので, 女王の寵愛を一手に受けるdポーンというのは非常に堅いわけです. これを起点に, さらに他のピースと連結させていくことでセンターに強固な砦を築きたい……そうした戦略による初手と言えます. 

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Figure.7 Closed Game

 黒小夜としてもこれを看過するわけにはいかないじゃないですか. そうして互いにdポーンを突き合い対称形を崩さないこの形をダブル・クイーンズ・ポーン・ゲームまたはクローズド・ゲームといいます. クローズドは互いにdポーンの主導権を握ろうとする駆け引きが見物になりますね. またピース同士の連結を巡る戦いになるので, オープン・ゲームと比べると盤面にピースが残って, 派手な斬り合いというよりかは鍔迫り合いのような印象になります.

 クローズド・ゲームのラインとしては,

 ・クイーンズ・ギャンビット

 ・メイソン・バリエーション

 ・チゴリン・バリエーション

 ・シンメトリカル・ディフェンス

 ・スラヴ・ディフェンス

 などなど, たくさんあります.

 

 オープニングのパターン④ 1. d4にd5以外

 最多の選択肢として1. ... Nf6から始まるインディアンシステムがあります.

 ・インディアンシステム

  ・モダン・ベノニ

  ・ベンコー・ギャンビット

  ・ブラック・ナイト・タンゴ

  ・ブタペスト・ディフェンス

 ・それ以外

  ・オールド・ベノニ

  ・ダッチ・ディフェンス

 などなど. 

 

 オープニングのパターン⑤ フランク・オープニング

 初手をdやeポーンではないところから始めるオープニングですね. 主流とは言い難いですが, 巧者の支配運びはとてもトリッキーで面白いものが多い反面, 自分でやってみると非常に指し難いところがあります.

 ・レティ・オープニング

 ・ラーセン・オープニング

 ・ソコルスキー・オープニング

 ・ダンスト・オープニング

 ・アンデルセン・オープニング

 ・サラゴッサ・オープニング

 などなど, これもぜひぜひいつか紹介してみたいラインがたくさんありますね. 知らないでいきなり目にすると実戦ではどうしても泡を食います.

 

 このページの小見出しすべてにリンクが貼られ, 個別のページが用意される……そんな日が果たして来るのでしょうか. 頑張ってみるので, どうか生暖かく見守ってください.